2016年度・2017年度 全国の電話相談のまとめ

4.       相談内容の特徴

1)   56の相談内容(小分類)の累計総数および上位5位の項目

2016年度:56の相談内容(小分類)の累計総数は、全体が20,110件、支部が14,910件、本部が5,200件である。支部と本部の各々の受電件数から算出すると、共に一人の相談内容は平均2項目である。

全体の上位5位は、「28.話や気持ちを聴いて欲しい」「24.家族・親族との関係・葛藤」「1.物忘れ」「22.{生活障害}のその他」「29介護方法・工夫」である。 支部と本部の比較では、1位の「28.話や気持ちを聴いて欲しい」と最下位「46.要介護者(本人)の就労」について、共に同じである。

2017年度:56の相談内容(小分類)の累計総数は、全体が22,501件、支部が17,886件、本部が4,615件である。支部と本部の各々の受電件数から算出すると、共に一人の相談内容は平均2項目である。

全体の上位5位は、「28.話や気持ちを聴いて欲しい」「1.物忘れ」「31.疲労が限界、パニック」「24.家族・親族との関係・葛藤」「5.様子がおかしい」である。支部と本部の比較では、1位の「29.話や気持ちを聴いて欲しい」と、最下位「46.要介護者(本人)の就労」について、共に同じである。

 

  • 2年間共に、一人の相談内容は平均2項目であるが、小分類の累計総数は、2017年度の方が2016年度より約10%増加している。一方で本部は、11%減少している。また本部は、2年とも上位1位の「話や気持ちを聴いて欲しい」の率が支部より高率である。これは、相談内容を焦点化し主題のとらえ方が影響しているか、継続的に見ていく必要がある。

 

2)   大分類8項目とパターン

2016年度:8分類の上位3位は、全体で「C.相談者の心身」「A1.認知症の症状(めだつ症状)」「B.人間関係」である。支部と本部は、上位1位「C.相談者の心身」、2位「A1.認知症の症状(めだつ症状)」の順位は同じである。

パターン数は、全体で「125」、支部「124」、本部「67」ある。パターンの多い上位5位は、全体で「C.」「A1.」「A1.C.」「B.C.」「D.」である。この上位5位についての順位は、支部と本部で同じであるが、それぞれの率は支部の方が多い傾向にある。また相談時間は、「B.人間関係」34.1分が他の項目より長い傾向にある。

2017年度:8分類の上位3位は、 全体で「C.相談者の心身」「A1.認知症の症状(めだつ症状)」「B.人間関係」である。支部と本部は、上位3位まで同じ順位である。パターン数は、 全体で「122」、支部「122」、本部「65」である。パターンの多い上位5位は、全体で「C.」「A1.」「A1.C.」「D」「B.C.」である。この上位5位についての順位は、3位まで支部と本部で同じであるが、2位までの率は支部の方が多い傾向にある。また相談時間は、「B.人間関係」35.54分が他の項目より長い傾向にある。

 

  • 大分類は、支部と本部が2年共に上位3位の順が同じである。パターン数は、2年共に支部が本部より多い。本部は、本部の電話相談事業報告書1)の各3年間の平均数が57で、ほぼ同数を維持している。このパターン数の違いは、支部と本部の相談員が相談を聴きながら主題の把握と記録法に違いあるか、検討が必要である。

 

3)   小分類の上位3項目の特徴

 

(1)性別による違い

2016年度

*「1.物忘れ」は、 全体では男女の性差がない。また男女共に本部の方が支部より高率である。

*「24.家族・親族との関係・葛藤」は、全体、支部と本部共に女性の方が男性より高率である。

*「28.話や気持ちを聴いて欲しい」は、 全体では女性の方が男性より高率である。支部は男性の方が高率、本部は女性の方が高率である。

2017年度:

1.物忘れ」は、 全体、支部では男女の性差がない。本部は、男性の方が女性よりやや多い。また男女共に支部の方が本部より高率である。

*「24.家族・親族との関係・葛藤」は、全体では女性が男性より高率である。支部と本部共に女性の方が男性より高率である。

*「28.話や気持ちを聴いて欲しい」は、 全体では女性が男性よりやや高率である。支部は男性の方が高率、本部は女性の方が高率である。

 

  • 「物忘れ」は、支部と本部共に男女の性差がない。一方、「24.家族・親族との関係・葛藤」は、支部と本部共に女性の方が男性より高率である。また「28.話や気持ちを聴いて欲しい」は、全体では女性の方が男性より高率であが、支部は男性の方が高率、本部は女性の方が高率である。この支部と本部の違いについては、今後の傾向をみていく必要がある。

 

(2)受診・未受診による違い

2016年度:

「1.物忘れ」は、 全体、支部と本部共に「未受診」のものの方が高率である。また本部の方が、支部より高率である。

「24.家族・親族との関係・葛藤」は、全体、支部と本部共に「受診」のものの方が高率である。

「28.話や気持ちを聴いて欲しい」は、 全体、支部と本部共に「受診」のものの方が高率である。また本部の方が、支部より高率である。

2017年度:

*「1.物忘れ」は、 全体、支部と本部共に「未受診」のものの方が高率である。また支部の方が、本部より高率である。

*「24.家族・親族との関係・葛藤」は、全体、支部と本部共に「受診」のものの方が高率である。

*「28.話や気持ちを聴いて欲しい」は、 全体、支部と本部共に「受診」のものの方が高率である。また本部の方が、支部より高率である。

 

  • 「物忘れ」は、「未受診」のものの相談が「受診」したものより多かった。また 「受診」したものは、「家族・親族との関係・葛藤」「話や気持ちを聴いて欲しい」の相談が「未受診」のものより多かった。「未受診」の相談者は、認知症特有の物忘れと加齢による生理的なものかの区別が困難であり、認知症の初期症状への対応に苦慮していると伺える。一方「受診」した相談者は、介護の長期化にともなう「家族・親族との関係・葛藤」や認知症の人の次々と変化する多様な症状やその対応に困惑し、「話や気持ちを聴いて欲しい」の相談が増えると考えられる。この傾向は、本部の電話相談事業報告書1)でも同様であった。相談者にとっては、認知症の発症に伴い表面化した家族と要介護者の複雑多岐に及ぶ人間関係に戸惑い、また認知症の進行にともなって新たな課題が生じ、延々と継続し容易に解決し得ないことが影響していると推測される。

 

(3)主介護者・非主介護者による違い

2016年度:

*「1.物忘れ」は、 全体では「主介護者」と「非主介護者」に差がない。が、 支部は主介護者が多く、本部は非主介護者が多い。また本部は、支部より非主介護者の率が高率である。

*「24.家族・親族との関係・葛藤」は、全体、支部と本部共に非主介護者の方が多い。また本部の方が、支部より高率である。

*「28.話や気持ちを聴いて欲しい」は、 全体、支部と本部共に非主介護者の方が多い。また本部の方が、支部より高率である。

2017年度:

1.物忘れ」は、 全体では「主介護者」と「非主介護者」に差がない。が支部は主介護者が多く、本部は非主介護者が多い。また本部は、支部より非主介護者の率が高率である。

*「24.家族・親族との関係・葛藤」は、全体、支部と本部共に「非主介護者」の方が多い。また本部の方が、支部より高率である。

*「28.話や気持ちを聴いて欲しい」は、全体、支部では「主介護者」と「非主介護者」に差がない。本部は、主介護者の方がやや多い。また本部は、支部より主介護者と非主介護者共に、高率である。

 

  • 「物忘れ」は、全体では「主介護者」と「非主介護者」に差がないが、支部は主介護者が多く、本部は非主介護者が多かった。一方、「24.家族・親族との関係・葛藤」の相談は、全体、支部と本部共に「主介護者」の方が多かった。非主介護者は、「別居」が75.2%、診断名の「7不明」が9.9%で共に「主介護者」より多かった。「非主介護者」は、親世代の介護やその意思決定場面において間接的に関わる立場と考えられ、姉妹・兄弟や家族との介護に対する温度差や、これまでの人間関係や「別居」から多様な悩みや問題を抱えたり、増幅していると推察される。また「28.話や気持ちを聴いて欲しい」の相談は、他の項目に比し全体、支部と本部の「主介護者」「非主介護者」共に高率である。相談者は、介護に伴い自身の仕事や暮らし、健康状態、経済上の悩みや負担が増えると共に、要介護者や他の家族との人間関係の変化が個別的で複雑多岐に生じ、また認知症の進行にともなって新たな課題が生じ、延々と継続し容易に解決し得ないことが影響し、情緒的サポートを求めていると推測される。

 

 (4) 介護度別による違い:

2016年度:

*「1.物忘れ」は、全体の上位3位が「1未申請」「6要介護1」「7要介護2」である。全体、支部と本部共に「1未申請」の回答者が50%を占めており高率である。また要介護1・2(合計)の方が、要介護3・4・5(合計)より20%高率である。

*「24.家族・親族との関係・葛藤」は、全体の上位3位が「7要介護2」「1未申請」「6要介護1」である。支部と本部の上位3位には、「7要介護2」「6要介護1」の2項目が共に位置づけられている。また要介護1・2(合計)の方が、要介護3・4・5(合計)より6~12%高率である。

*「28.話や気持ちを聴いて欲しい」は、全体の上位3位が「8要介護3」「6要介護1」「7要介護2」である。支部と本部の上位3位には、「7要介護2」「1未申請」の2項目が共に位置づけられている。また要介護1・2(合計)と要介護3・4・5(合計)は、共に約30~40%を占め同じ傾向である。

2017年度:

1.物忘れ」は、全体の上位3位が「1未申請」「6要介護1」「7要介護2」である。支部と本部共に「1未申請」の回答者の方が1位である。また要介護1・2(合計)の方が、要介護3・4・5(合計)より高率である。

*「24.家族・親族との関係・葛藤」は、全体の上位3位が「6要介護1」「1未申請」「8要介護3」である。支部と本部では、上位3位の順位がばらついている。また要介護1・2(合計)の方が、要介護3・4・5(合計)より高率である。

*「28.話や気持ちを聴いて欲しい」は、全体上位3位が「8要介護3」「7要介護2」「6要介護1」である。支部と本部では、上位3位の順位がばらついている。また要介護1・2(合計)と要介護3・4・5(合計)は、共に約30~40%を占め同じ傾向である。

 

  • 「物忘れ」の相談は、 2016年度において支部と本部共に「1未申請」の相談者約50%であったが、2017年度においてわずかに減少している。「家族・親族との関係・葛藤」「話や気持ちを聴いて欲しい」の相談は、 2016年度と2017年度共に「要介護1」「要介護2」「要介護3」のものが各々約20%近くを占めており、他の介護度の者と比べて多い傾向にある。また「家族・親族との関係・葛藤」の相談は、 2016年度と2017年度共に「7要介護2」が20%を維持している。「話や気持ちを聴いて欲しい」の相談は、 2016年度と2017年度共に「8要介護3」が20%を維持している。介護認定未申請の相談者は認知症特有の諸症状や認知症の人への対応に困惑し、また要介護度1・2・3の相談者は長期にわたる介護にともない「家族・親族との関係・葛藤」「話や気持ちを聴いて欲しい」という相談内容が増加していると考えられる。

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