認知症の人との境界線は?~Borderless -with dementia-~

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Borderless -with dementia-(以下、borderless)は、2020年4月に認知症当事者を含む数人の仲間たちを中心に立ち上がりました。認知症当事者の経験を起点に、多様な活動を展開するコミュニティです。

認知症の人とともに時間を過ごして

私たちはもともと愛知県名古屋市を中心に、若年性認知症の当事者や家族、そしてパートナーと呼ばれる人々がつどう場のメンバーでした。そこでは、ともに旅をしたり、ときには認知症に関する啓発活動や、他領域の人たち(例えばAIの研究者など)とのコラボレーションといった活動も展開していました。

そのような活動を展開していく中で、私たちは多くの時間を認知症当事者とともにすごしてきました。特に、ともに旅をすることはとても素晴らしい体験でした。ともに時間をすごすことで、私たちはお互いをより理解することができました。認知機能障害が生活のどのような場面に影響を及ぼしているか、その影響をどんな工夫で乗り越えようとしているかといった体験にはこれからの社会を考えるヒントが詰まっていました。そして仲間たちで認知症とともによりよく生きるということや認知症フレンドリーな社会について語り合いました。

わたしたちの抱いた「問い」

ともに旅をすることは多くの気づきを得る機会になる

 

私たちはそうした活動の中である問いを抱きました。それは、この社会の中で「認知症の人とそうでない人という境界線は存在するのか」という問いでした。

この社会では、認知症の人とそうでない人という境界線が実在するかのように人々はふるまっています。その境界線は深く人々の意識に内在化し、社会に分断をもたらしているように見えます。その一方で、私たちはともに時間をすごす中で、そんな境界線などなく、友人として当たり前に時をすごしていました。この境界線に対する認識のズレが、このコミュニティの出発点になりました。そして、まさにborderlessというこのコミュニティの名称は、私たちが考える社会のあり方をしめしているのです。borderlessのロゴマークは、そんな思いを込めて境界線などない世界を自由に飛びまわる鳥をモチーフにしたロゴマークです。

コロナ禍で「会えない」-ウェブのつどいへ

borderless -with dementia-のロゴマーク

 

コミュニティの立ち上げにコロナ禍が重なりました。「会えない」という状況の中で、これまで培ってきたつながりが途切れてしまうという危機感から、私たちは2020年3月からウェブ会議システムを使ったつどいの場を立ち上げました。多くのメンバーがウェブ会議システムを使うこと自体が初めてでしたが、週一回の練習会から始め、1年が経った今でも毎週オンラインの部屋に集まっています。

つどいは「borderless bar」と名付けられた場です。毎回20組程度の人が参加しており、いくつかのテーブルにわかれて話をします。少しお酒や軽食もつまみながら、リラックスした雰囲気で話をします。話題は認知症のことばかりとは限りませんが、当事者が集まる場での会話は、それが日常生活の何気ない場面だとしても生活の工夫が感じられ、ヒントに満ちていると感じます。最近はスマートフォンの使い方やアプリの使い方についての話題も多くなりました。例えば、あるテーブルでは、スマートフォンの音声認識の使い方を練習したり、あるテーブルでは体調管理の一環として利用できそうな睡眠管理アプリの情報提供があったたり、といった具合です。

オンラインつどいの大きなメリット

オンラインのつどいの場の様子

 

「メリット」と「課題」

オンラインのつどいの場をつくって、大きなメリットと感じていることがあります。オンラインツールの獲得により、情報収集や学びに対してより主体的になれているということです。これまで、認知症についてインターネットなどで情報収集していると、多くの間違った情報やネガティブな情報が流れてきていました。そうした情報に受け身的に曝されていた人々が、自ら主体的に情報を選択し、学べるようになったことは、オンラインツールを得たことの最も大きな恩恵でした。

一方で、オンラインのつどいでは、オフラインのつどいほどの濃密なピアサポートの作用を感じることは難しいと感じています。これは最大の課題ですが、オンラインとオフライン、双方の強みを理解し、それらの場が有機的に連携していくことが求められるようになるでしょう。

思いや体験を伝える学びのコンテンツの配信

つどい以外にも、自治体や企業からの依頼を受けて、講演やセミナーで当事者の経験を伝える活動を行っています。企業から「当事者の体験や意見をヒアリングしたい」という依頼もありました。依頼を受けるだけでなく、コミュニティの仲間たちの思いや体験を伝える学びのコンテンツ(オンラインセミナーやラジオ風の番組など)を作成し配信しています。
borderlessの活動に決まった型はありません。このコミュニティをプラットフォームとして、多様なステークホルダーが乗り入れ、出会いと学び合い、新たなアイデアが次々と生まれていくことが、社会をよりよくしていくことにつながっていくと信じています。

企業ヒアリングに参加し自らの経験を語る

【著者プロフィール】

鬼頭史樹
borderless -with dementia- メンバー

【団体プロフィール】

名称
borderless -with dementia-

紹介
「認知症の人と認知症でない人という“境界線”は存在するのか」という問いを出発点として2020年4月に発足。認知症当事者の経験を起点とした多様な活動を展開するコミュニティ/プラットフォーム。オンラインツールを活用したつどいの場づくり、情報発信、ネットワーク構築などを行う。2020年12月NHK厚生文化事業団が主催する、第4回「認知症とともに生きるまち大賞」にてニューウェーブ賞を受賞。

 

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