2016年度・2017年度 全国の電話相談のまとめ
3. 要介護者の特徴
1) 要介護者の性別と年齢
2016年度:女性の要介護者は、全体で64.9%、支部約60%・本部約70%であり、男性より多い。また要介護者の年齢は、全体で男性76.6歳、女性80.4歳であり、年齢幅は、26歳から104歳である。支部と本部共に、女性が79.9歳、81.5歳で、男性よりも高齢である。年齢区分では、支部と本部共に後期高齢者層が多いが、本部の方が上回っている。男女別では、75-84歳の場合支部と本部共に男性が多く、85歳以上の場合支部と本部共に女性が多い。
2017年度:女性の要介護者は、 全体で65.4%、支部約60%・本部約70%であり、男性より多い。また要介護者の年齢は、全体で男性77.1歳、女性80.8歳であり、年齢幅は、19歳から103歳である。支部と本部は、女性が80.1歳、82.6歳で、男性よりも高齢である。年齢区分では、支部と本部共に後期高齢者層が多いが、本部の方が上回っている。 男女共に64歳未満と65-74歳の年齢層が支部の方が本部より高率である。一方、男女共に75-84歳と85歳以上は、本部の方が支部より高率である。
- 2年共に女性の要介護者は、60%を越えて男性より多い。また、年齢も80歳を超え男性より約4歳高年齢であり、85歳以上のものも高率である。平成28年 国民生活基礎調査の概況2)によれば、要介護者等の年齢が高い階級が占める割合が上昇しており、平成28 年の要介護者等の年齢を性別にみると、男性は「80~84 歳」1%、女性は「85~89 歳」の26.2%が最も多くなっている。本報告は、若年性認知症の人も含まれているため75-84歳の男性が多いこと、女性の場合は厚労省の報告と同傾向の年齢層で反映しているといえる。
2) 要介護者からみた主介護者の続柄
2016年度: 要介護者からみた主介護者は、「6子ども・その配偶者」66.9%、「9配偶者」24.7%、を合わせると約90%を占めている。実母からみた主介護者は、娘という回答が88.9%で高率である。
2017年度:要介護者からみた主介護者は、「6子ども・その配偶者」41.0 %、「9配偶者」27.3%、を合わせると約68.3%を占めている。実母からみた主介護者は、娘という回答が78.0%で高率である。
- 平成28年 国民生活基礎調査の概況2)によれば、「同居」の主な介護者の要介護者等との続柄をみると、「配偶者」が2%で最も多く、次いで「子」が21.8%、「子の配偶者」が9.7%となっている。この報告は、認知症に限定された要介護者でないが、「子ども・その配偶者」を合計すると31.5%である。本報告では、前述のように主介護者と要介護者との住まい方が、2年共に「1同居」が約60%であった。しかし「6子ども・その配偶者」が、同居が別居かについて分析をしていないために単純に比較できない。今後のデータの推移を見ていく必要がある。
3) 認知症への「変化」に気づいた時期
2016年度:「変化」に気づいた時期は、全体でみると「半年以内」16.1%、「1年以内」15.2%である。「半年以内~2年以内」の合計は、全体44.8%で、支部45.5%、本部43.9%であり約半数を占めている。
2017年度:「変化」に気づいた時期は、全体でみると「半年以内」12.6%、「1年以内」12.6%である。「半年以内~2年以内」の合計は、全体37.7%で、支部39.3%、本部35.1%で約40%である。また「半年以内~3年以内」の合計は、全体50.1%であり、支部51.2%、本部48.5%であり半数に近い。
- 「変化」に気づいた時期は、2016年度「半年以内~2年以内」が約半数、2017年度が約40%である。相談者の半数近くは、「変化に気づいた半年以内~2年以内」に電話相談してきている、ということである。本部の電話相談事業報告書1)では、2013~15年において「半年以内~2年以内」の合計が約30%であったことから、徐々に増加していると伺える。この背景は、「認知症サポーター」が全国で1千万人を超え(2017年3月)、「認知症が身近な病」という認識の広がりや、相談者が多様な情報収集により早期に気づく意識が変化してきたのか、電話相談記録の方法によるものか、経過観察が必要である。
4) 受診した時期と受診率
2016年度:受診した時期は、「半年以内~2年以内」の合計が、全体50.5%であり、支部47.4%が本部54.2%よりやや低い。受診率は、全体でみると78.8%で、支部80.0%が本部76.3%よりやや高い。
2017年度:受診した時期は、「半年以内~2年以内」の合計が、全体42.4%であり、支部40.7%が本部44.9%よりやや低い。「半年以内~3年以内」の合計は56.1%であり、支部55.4%、本部57.2%で、いづれも60%に近い。 受診率は、全体でみると75.5%で、支部74.6%が本部77.9%よりやや低い。
- 相談者の半数近くは、受診した「半年以内~2年以内」に電話相談してきている、ということである。「家族の会」(監修片山)ら6)によれば、「変化に気づいてから確定診断までにかかった期間」が平均15カ月(n:361)と報告している。本報告において相談者の半数は、受診した「半年以内~2年以内」に電話相談してきており、確定診断にいたる不安や認知症の本人とのかかわりにおいて多様な葛藤を抱えていることが推察される。また受診率は、2年とも約80%である。この傾向は、本部の電話相談事業報告書1)の各3年間の受診率が約30%であったことに比べると高い。これは、関連諸機関や報道などによる最近の啓発活動と共に2017年4月に開催された国際アルツハイマー病協会国際会議の広報活動などにより人びとの関心の高まり、「認知症サポーター」が全国で1千万人を超え(2017年3月)、「認知症が身近な病」という認識が広がり、「偏見」の緩和や解消に影響し受診につながったとも考えられる。
5) 診断名
2016年度: 診断名(一つめに記載)は、 全体で「アルツハイマー型認知症」50.4%が最も多く、次いで「5その他」14.5% 、「2脳血管性」6,2%、「4レビー小体型」4.5%、「3前頭側頭型」3.1%、「5MCI」2.7%の順である。支部は、本部と順位は同じであるが診断名の率が低く「7不明」の率が高い。
2017年度:診断名(一つめに記載注1)は、 全体で「1アルツハイマー型認知症」49.1%が最も多く、次いで「6その他」19.0% 、「2脳血管性」5.5%、「4レビー小体型」3.7%、「3前頭側頭型」2.7%、「5MCI」1.6%の順である。支部は、 「6その他」を除いていずれの診断名の率が本部より低く、「7不明」の率が高い。診断名(二つめに記載注2)は、 全体で「4レビー小体型」30.1%で、 最上位にあげられている。
- 高齢者認知症の病型頻度は、国立長寿医療研究センター4)(2015年4月1日)によれば「アルツハイマー型認知症」4%、「脳血管性」18.9%、「レビー小体型」4.6%、「前頭側頭葉変性症」1.1%、「アルコール関連」0.5%、「混合型認知症」4.2%と報告されている。この率は異なるが、順位は本報告における第2位の「5その他」を除いて類似している。本報告は、一つ目に記載された診断名を元に分析されたことが関連していることも考えられる。
6) 要介護度
2016年度: 要介護度を3区分し見ると全体の「要支援1」「要支援2」が6.4%、「要介護1」「要介護2」が31.4%、「要介護3」「要介護4」「要介護5」が22.5%である。また「未申請」が28.0%である。 支部は、 「要介護1」「要介護2」が29.8%で、本部34.7%%より低く、 「11不明」が9.1%で本部5.7%より高い。
2017年度:要介護度を3区分し見ると、全体の「要支援1」「要支援2」が5.4%、「要介護1」「要介護2」が31.7%、「要介護3」「要介護4」「要介護5」が25.2%である。また「未申請」が24.5%である。支部は、 「要介護1」「要介護2」が30.3 %で、本部35.9%%より低く、 「11不明」が10.4%で本部5.7%より高い。
- 2017年度は、2016年度に比べて「要介護3」「要介護4」「要介護5」がわずかに増加し、「未申請」がわずかに減少している。「未申請」の比率の推移と背景要因(例えば、診断後に初期サポートへつないでいる初期集中支援チームの活動実態)ともあわせて検討が必要である。
また今回は、要介護度別に要介護者の年齢について分析していない。平成29年版高齢社会白書7)では、「高齢者の要介護者等数は増加しており、特に75歳以上で割合が高い」と報告されていることから比較できるよう検討する必要がある。
7) 利用しているサービス
2016年度:「3通所サービス」は、全体、支部と本部共に約30%で他のサービスに比べ多い。一方サ-ビス「0利用なし」は、 全体、支部と本部共に約40%である。
2017年度:「3通所サービス」は、全体、支部と本部共に約30%で他のサービスに比べ多い。一方サ-ビス「0利用なし」は、 全体、支部と本部共に約30%台である。
- 利用サービスは、分類した11項目のうち「3通所サービス」が2年とも30%で最も利用率が高かった。2017年度の未利用率は、2016年度に比べて減少傾向にある。平成28年高齢社会白書3)によれば、要介護(1~3)の人は居宅サービスが多い一方、重度(要介護5)は施設サービス利用が半数である、と報告されている。これらと比較するためには、本報告の項目の検討が必要である。