認知症という病気について(3)

医師指さし

認知症の治療

認知症を来す病気の項で記載した「治療可能な認知症」はそれぞれの内科的・外科的治療を受けますが、認知症の大部分を占めるアルツハイマー型認知症などでは、薬物治療(抗認知症薬、抗精神病薬)、非薬物治療、介護サービスの利用などの生活環境の調整、家族介護者への支援などが行われます。最近では、認知症の本人が相談できる場もできつつあります。

薬物治療

薬物治療には大きく分けて抗認知症薬と随伴症状改善薬の2つの治療があります。抗認知症薬として、アルツハイマー型認知症には4種類、レビー小体型認知症には1種類の薬があります。随伴症状改善薬は、認知症に伴う精神症状などを改善するための抗精神病薬とレビー小体型認知症のパーキンソン症状やレム睡眠行動障害を改善する薬が使用されることがあります。

非薬物療法

非薬物療法には運動療法、音楽療法、芸術療法、回想法などがあります。人によって好みも異なるので、好みに合わせて無理なく行うことが大切です。介護保険サービスのデイサービスなどの活動の一環で行われている場合もありますので、確認してみましょう。

介護サービスの利用などの生活環境の調整

認知症に伴って生じることの多い症状に無為・意欲低下があります。自主的に計画を立てて活動を行うことは難しい場合が多いので、生活のリズムになるような外出機会を作ることが大切です。認知症の重症度に応じて、どのようなサービスを利用するのが適切かなどは変化してきますので、自治体が発行しているケアパス(認知症のためのガイドブック)などを参考にしましょう。介護保険とは別に認知症カフェなどの相談・活動の場も各地にあります。ケアパスに紹介されていることが多いです。

家族介護者等への支援

認知症になった場合は、良き理解者を持つことが大切です。適切な薬物療法、非薬物療法、
介護サービスなどを受けるためにも、一緒に考えてくれる理解者の存在がとても大切です。一方で、認知症という病気は身近な人にとって理解しがたい場合も少なくありません。何度も同じことを尋ねてきた場合、どのように返事をするのが良いのだろうということもありますし、日々多くの悩みも生じます。認知症の人の身近にいる家族などが、認知症について知識を持ったり、心理的負担を傾聴してもらったり相談したりする場がとても大切です。

認知症の経過

認知症には大きく分けて4つの時期があります。認知症の前段階とも言われる軽度認知障害(MCI)の時期、認知症と診断されたのち軽度、中等度、重度の段階の4つです。大きな目安を以下に記します。アルツハイマー型認知症の場合、それぞれの時期が3~5年ぐらいで徐々に変化します。

軽度認知障害(MCI)の時期

年齢に比して明らかな認知機能の低下(強い物忘れなど)はあるものの、買い物や調理、交通機関の利用などの日常生活の能力はおおよそ保たれています。この頃から怒りっぽさや被害妄想、不安症状などの認知症の行動・心理症状を伴う場合がありますので、病気の存在を早めに見極めることは大切です。

認知症の軽度の段階

家庭内での生活にはおおよそ支障はないものの、軽度認知障害(MCI)の時期に保たれていた買い物などの日常生活動作に支障が生じてきます。しかし、排泄や入浴、服の着替えなどの基本的な日常生活動作は保たれています。

認知症の中等度の段階

基本的な日常生活動作にも誰かの手助けや見守りが必要になってきます。家族や介護保険の十分な支援がないと日常生活を過ごすことや1人暮らしが難しくなる時期です。しかし、周囲の理解があれば、昔から馴染んできた話をしたり、手仕事をしたりすることは可能な場合も多いです。

認知症の重度の段階

認知機能の高度な低下のため身の回りの多くのことに介護が必要となり、言葉でのコミュニケーションも難しいことが多くなります。本人らしさを推測するのが難しくなりますが、周囲の人が理解して快適に過ごせるよう支援することが大切です。

周囲の理解がまずは必要なんですね。


認知症はそれぞれの時期にあった環境調整が重要です。
ケアパスや身近な専門家、介護家族の集まりなどの機会を利用して相談してみましょう。


認知症は、くすりやかかわりで症状の出現や進行を遅らせることができる可能性があるんですね!

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