第二ステージを迎えた認知症サポーター 啓発からチームオレンジへ

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認知症サポーターとは

「認知症サポーターキャラバン」は、平成17年(2005年)度に厚生労働省の提唱で開始した。
当時、認知症についてマスコミ等で語られるのは「過酷な介護」「何もわからなくなる」といった不安をあおる切り口が主流であり、医学的見地やデータに基づき正しく理解する視点が欠如していた。知識不足は偏見を助長し、早期発見・受診を阻む結果ともなる。この反省を踏まえ体系的に構築された啓発事業が「認知症サポーターキャラバン」である。「認知症サポーター」は「認知症について正しい知識を身につけた、認知症の人や家族の応援者」である。
5年間で認知症サポーターを100万人養成するという、事業開始当初の目標を4年後の平成21(2009)年5月末に達成したのち、常に厚生労働省の掲げた目標値を追い抜きながら加速度的に養成が進められてきた。この1年は新型コロナウィルスの影響を受け大幅に講座が減少したものの、令和2(2020)年12月末時点では1,300万人を超えるに至っている。

認知症サポーターキャラバンのしくみ──重層的な支援を想定

① 実施主体は自治体と企業・職域団体
「認知症サポーター キャラバン」は二つの流れのもとに実施されている。
一つは自治体(市町村・都道府県)が主体となり、一般住民、住民の暮らしに身近な地域の企業や職域団体、学校の児童・生徒を対象にサポーターを養成するルート、もう一つは全国規模の企業・職域団体が組織を挙げて職員を対象にサポーターを養成するルートである。現在、47全都道府県と1729市区町村(全1741市区町村中)の自治体、約4500の企業・職域団体が認知症サポーターの養成を行っている(図1)。

図1.認知症サポーターのしくみ

 

② 知識の普及と支援構造を一体的に展開
サポーター養成に先立ち、講師役「キャラバン・メイト」を養成する。
メイト研修では、認知症の基本知識と対応経験がある講師陣が、対象者ごとのカリキュラムの立て方や内容、時間配分まできめ細かく伝授する。メイトの職種は介護・医療の専門職から民生児童委員のリーダーまで多岐にわたり、市区町村ごとに多職種混成によるチームを組む。講座を受けた人から「家族が認知症で…」「隣人の様子が最近おかしい。認知症では?」といった相談を受けることもあり、メイト研修講師である医療や保健・福祉の専門家との連携体制を生かし、相談機関の紹介、医療機関受診の支援を行い、早期発見・早期対応を促す(図2)。

図2.認知症の正しい知識の普及と支援の構造

 

③ 全国共通対象者別のカリキュラムを提供
「認知症サポーター養成講座」は90分程度(小中学校の授業で行う場合は45分以上)を標準とし、認知症の起こるしくみから早期診断の重要性、家族の気持ちの理解までを全国共通の内容のテキストに基づき系統立てて学ぶとともに、認知症の人への適切な接し方を身につける。テキストには標準版のほか小学生向け、中学生向けがあるほか、金融機関やスーパーマーケット等職種ごとに、対応の仕方を説明する補助教材も用意され、対象者ごとに基本と実践を組み合わせたカリキュラムが組まれる。全国どこでも誰もが一定の質が担保された内容で認知症を正しく理解し、症状への共通認識をもつことにつながる。

活動するサポーター

認知症サポーターは、何か特別なことをする人ではない。義務がないことが逆に功を奏し、得た知識を生かし、自分たちにできる手助けを考え出そうとする創造性が引き出される。
平成30年(2018年)度にサポーター養成を行う全自治体を対象に実施した調査(「認知症サポーターの地域での活動を推進するための調査研究事業」全国キャラバン・メイト連絡協議会、有効回収数1,131件)でも、「オレンジカフェの開催または参加」(307件)、「見守り」(220件)、「傾聴」(136件)をはじめサポーターが自主的に開始した活動実績が全国でみられる。ボランティア活動が目的ではないサポーターが自ら実践する取り組みであることを考えると、決して小さな数字ではない。

チームオレンジが始動

令和元年(2019年)度、15年間培われた認知症サポーターの活動の土台の上に、これを有効に機能させるしくみ「チームオレンジ」がつくられた。認知症サポーターが認知症の人・その家族を含めた“近隣チーム”を形成し支援にあたるもので、すでに全国で150以上のチームオレンジが活動している(図3)。
チームオレンジの基準は次の「三つの基本」である。
① ステップアップ講座修了及び予定のサポーターでチームが組まれている。
② 認知症の人もチームの一員として参加している(認知症の人の社会参加)
③ 認知症の人と家族の困りごとを早期から継続して支援ができる。
メンバーを対象とするステップアップ講座受講者をみると、60歳代以上が約6割、70歳代以上に限っても約4割となり、7対3で女性が大半を占める。担い手の中心は元気なシニア層であり、サポーター自身の社会参加、介護予防効果が期待できるとともに、近所づきあいの延長線上の“お互い様の”仲間意識が、支援する側、される側の垣根を取り払う。
チームオレンジは高齢者が徒歩で通える圏内程度を目安に、拠り所(居場所)を設置し、週1回程度、できれば週3回くらい開設しそこにサポーターが当番制などで駐在することが想定される。必要とあらば認知症の人の居宅を訪問して話し相手となるなどの出前支援、美容院等への外出支援も随時行う。
地道なサポーター養成により“正しい理解”が根づいた今だからこそ、認知症の人と地域住民が「支援する人、される人」の関係を超えてともに自らの手で居場所をつくることが可能となり、今後の地域共生社会実現を牽引するものとなる。

図3.チームオレンジのしくみ

 

【団体プロフィール】

全国キャラバン・メイト連絡協議会
「認知症サポーターキャラバン」の推進団体。事業の企画、教材開発をはじめ、キャラバン事業の実施主体となる自治体、企業・職域団体等の支援を行う。NPO法人地域共生政策自治体連携機構に事務局を置く。
【公開連絡先】
電話:03-3266-0551  https://www.caravanmate.com

 

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