早期診断を考える―『早く知るほど、できることが増える社会』とは
第2回DIXNetオンライン交流会を開催しました
― 認知症の早期診断を考える ―
8月31日、第2回DIXNetオンライン交流会を開催しました。今回のテーマは、第1回交流会で参加者から提起された「認知症と卓球」と「認知症の早期診断」です。前半では卓球と認知症に関する国内外の取り組みを紹介し、後半では「早く知るほど、できることが増える社会」をどう実現していくかについて、参加者それぞれの経験や立場から意見を交わしました。
認知症と卓球
最初に、卓球が認知症予防や非薬物的な支援として活用されている事例を紹介しました。
卓球は、ボールの動きを目で追い、身体を動かし、瞬時に判断して打ち返すという動作を繰り返します。また、ラリーが続く楽しさや適度な競争心など、意欲を引き出す要素もあります。海外では、認知症のある人が参加できるようルールや用具を工夫したプログラムや、介護施設職員・ボランティアへの研修なども行われています。
交流会の終盤には、参加者から中国における卓球文化の話や、若年性認知症の集いで、音の出るボールを転がして行う卓球を楽しんでいるという事例も紹介されました。
卓球は単なる「認知症予防の運動」にとどまらず、楽しみ、人との交流、社会参加につながる活動としても可能性があることが感じられました。
一人の経験から「早期診断」を考える
続いて、今回の中心テーマである「認知症の早期診断」について話し合いました。
冒頭では、第1回交流会の参加者が紹介してくださったインタビュー記事をもとに、認知症の診断に至るまでの経験を紹介しました。
言葉が出にくくなるなどの違和感を感じても、最初は「気のせい」「年齢のせい」と考えてしまうことがあります。その後、仕事への影響などが大きくなって初めて受診につながる場合もあります。
一方、診断を受けた後には、仕事、収入、家族への影響など新たな問題が生じます。地域包括支援センターなどから制度や支援について情報を得ること、同じ立場の人と出会える場につながることの重要性も紹介されました。
そこから参加者にも、ご本人や家族の診断にまつわる経験を伺いました。
「もっと早く病院につながっていれば、できることがあったかもしれない」という家族の経験や、本人自身が違和感を感じて受診し、数年後に診断につながった経験などが語られました。
また、診断後に利用した訪問医療、デイサービス、訪問入浴、訪問歯科、移動支援など、地域の支援が生活を支えたという経験も紹介されました。
「診断」はゴールではない
今回の話し合いで特に繰り返し語られたのは、早期診断だけを進めても十分ではないということでした。
参加者からは、
「診断だけでなく、その後にどんな支援があるのかを一緒に伝える必要がある」
「若年性認知症の場合、働きたいと思っても利用できる支援や居場所が非常に少ない」
「早期診断が“早期絶望”になってはいけない」
という声が上がりました。
認知症と診断された途端に、財布や携帯電話を取り上げられたり、何もできない人として扱われたりすることへの懸念も示されました。
診断直後に必要なのは、「これから介護が必要になります」という説明だけではなく、
「これまでの生活をできる限り続けていきましょう」
というメッセージではないか、という意見もありました。
また、若年性認知症では、就労や経済的な問題が特に大きいことも指摘されました。働く力が残っていても、その力を生かせる場所が十分にないという現状があります。
実際に就労支援につながり、しばらく仕事を続けることができた経験から、
「働ける人が働き続けられる社会になれば、『認知症になっても大丈夫』と思える社会に近づくのではないか」
という意見もありました。
ADIのキャンペーンから考える
今回、国際アルツハイマー病協会(ADI)の2026年世界アルツハイマー月間キャンペーンについても紹介しました。
今年のメッセージは、
“The Earlier You Know, The More You Can Do: A Dementia Diagnosis Matters.”
「早く知るほど、できることが増える―認知症の診断には意味がある」です。
重要なのは、単に早く病名をつけることではありません。
症状に気づき、診断を受け、適切な説明を受け、治療や支援につながり、その後の人生について本人が考えられること。
診断を、本人のこれからの生活に役立てることが重要だというメッセージです。
私たち市民に何ができるのか
最後に、
「早く知るほど、できることが増える社会を実現するために、私たち一人ひとりには何ができるでしょうか」
という問いについて意見を交わしました。
地域の店や街全体が認知症を理解し、特別な場所ではなく普通の地域の中で暮らし続けられる環境をつくること。
診断後の支援についてもっと伝えること。
若年性認知症の人が働き続けられる仕組みをつくること。
そして、認知症を「怖いもの」として遠ざけるのではなく、自分自身にも関係することとして考えること。
さまざまな意見が出されました。
今回の交流会を通して見えてきたのは、
「早期診断を進める社会」と「認知症になっても安心して暮らせる社会」は、別々のものではない
ということでした。
診断の先に、仕事があり、役割があり、仲間があり、支援がある。
そのような社会であって初めて、「早く知るほど、できることが増える」という言葉が現実のものになるのではないでしょうか。
DIXNetでは、今回出された意見を交流会だけで終わらせず、今後の活動や参加者同士の意見交換につなげていきたいと考えています。