『レビー小体型認知症サポートネットワーク』(DLBSN)の役割

08長澤かほる_IMG_4013 もの忘れフォーラム

初めに―

レビー小体型認知症(DLB)は、小阪憲司先生によって1970年代に日本で発見された認知症です。認知症というと多くの人が「もの忘れ」など記憶にかかわる症状をイメージしますが、レビー小体型認知症は、認知機能だけでなく全身に症状があらわれるため『全身病』という捉え方をしなければなりません。
【図1】で示した症状が代表的な症状です。診断を受ける10年も20年も前から「レム睡眠行動障害」が表れる人もあり、やがてうつ症状、嗅覚症状など一般的な認知症とは違う症状が出現してきます。そのうち幻視が現れ、歩き方が変になる、失神する—など、次々と多岐にわたる症状が現れてきます。もしレビー小体型認知症(レビー小体病)を知らなければ、症状に応じた別々の診療科にかかります。そして、受診した診療科からさまざまな薬が出て、結果、全身状態が悪くなることにもなりかねないのです。
認知症の原因疾患で一番多いのは、アルツハイマー型認知症ですが、今ではそれに続いて、DLBが『第二の認知症』と呼ばれています。それでもまだ別の疾患と診断されたままの人が多いことも事実です。

DLBとそのケアを正しく知らせるために

2007年に『レビー小体型認知症研究会』がスタートしてから、1年後に『レビー小体型認知症家族を支える会』が発足しました。数年間にわたり主要都市で講演やイベントで啓発活動をし、並行して本部と2つの支部が定期的な交流会を開催するようになりました。当時、すでに診断を受け、介護や医療で悩んでいるご家族が、会員になって交流会に参加されていましたが、それでもまだDLBの全体像を知らない傾向がありました。一方、イベントの参加者からの声は「レビー小体型認知症って初めて知った」というものが大半でした。小阪先生も「DLBと診断されず、誤診が多い。それによって状態が悪くなり、介護するご家族が苦しんでいる」ことを懸念しておられました。
そして『家族を支える会』の組織改編がなされ、2014年に後継組織としてDLBSNが発足いたしました。

DLBSNってどんな組織?

本部・2支部だけの活動だった『家族を支える会』から、拠点を広げるために、小阪先生が全国各地にDLBの講演に出かける度にDLBSの活動に賛同する医療職・介護職を探していかれました。
(1) DLBSNは現在(2021年3月)全国に19か所に活動拠点を設け、それを「エリア」と呼んでいます。【図2】
(2) 本部・支部はなく、各「エリア」は独立しつつネットワークでつながっています。
(3) DLBのケアのことがわかる専門職が「代表」となります。(DLB研究会会員)
(4) 「顧問医」はDLBの診断・治療ができる専門医です。(DLB研究会会員)
(5) 各エリアは「代表・顧問医」を基本とし、そのほかに、サポートする「協力医」「副代表」「協力者」などエリアごとに呼称が違うメンバーを設置しています。
(6) 年会費を徴収する会員制度はありません。
(7) 活動スタイルは、各エリアが地域の実情に即して行っています。
(8) 「代表」も「顧問医」も勤務しながらのボランティア活動です。電話相談等を受け付けない代わりに、主に「交流会」を開催しますが、そこに質問、疑問、不安を抱えたご家族やケア従事者が集まります。
(9) 各エリアの活動案内は、DLBSNのホームページにその都度掲載します。

DLBSNの方針と特徴

DLBの疾患特徴や予後が要因となり、介護するご家族は主に以下のような問題を抱えて交流会に参加します。
●今後はどうなるのか、見通しが知りたい ●処方されている治療薬で良いのかどうか ●専門病院・クリニックを紹介してほしい ●出現する症状の対応の仕方がわからなくて困っている ●この症状には薬が効くのか
また、入所系施設や訪問系・通所系サービスのスタッフも、DLBの利用者の対応の方法に迷っているケースも少なくありません。
そのため交流会には、介護するご家族だけでなく、ケア関係者、行政、関心がある企業担当者、介護を研究テーマにする学生なども参加しています。
交流会は…【図3】
■必要な人が、必要な時に、必要な情報を得る場
■家族会・介護者教室・医療相談・主治医のバックアップなどの役割
■「時短で解決の糸口」を提供することを目標に医療とケアの両面からサポート
■居住地に関係なく、どのエリアの交流会にも参加可能

DLBSN全体の活動は

■事務局がないため、年度ごとに「当番代表」を選出してとりまとめの役割を担う。
■年に1回、11月の土曜日に「DLBSN全国交流会」を午前中に、「DLB研究会」を午後に、同日開催する。
■交流会などの活動案内はホームページに掲載する。

まだ充実させていかなければならない活動、エリア設立が必要な地域もあります。それでも、今後もDLBの正しい知識、適切なケアの情報を提供できる専門医・専門職がいる強みを生かし、介護する家族の重荷を共有できるよう力を尽くしてまいります。

 

DLBの代表的な症状

DLBSNの全国のエリア配置図

2017 ADI国際会議 in 京都 で使用したリーフレットの表紙・裏表紙

【著者プロフィール】

長澤かほる
レビー小体型認知症サポートネットワーク東京 代表

【公開連絡先】
レビー小体型認知症サポートネットワーク ホームページ http://dlbsn.org/

レビー小体型認知症研究会 ホームページhttp://www.d-lewy.com/
研究会事務局
〒235-0043 横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー43階
LM総合法律事務所内

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