前頭側頭型認知症の診断、社会的孤立、孤独および抑うつの始まり:タニア・マルティネス(スペイン)
タニア・マルティネス
前頭側頭型認知症の診断、社会的孤立、孤独および抑うつの始まり:
私は、認知症の人たちに孤独感、孤立感、抑うつ感を引き起こす状況と、孤独感や漠然とした不安感の一因になると考えられるあらゆる状況について、皆さんにお伝えしたいと思います。どれも、60歳で前頭側頭型認知症と診断された父を介護した経験から、私が知ったことです。
最初に孤独や孤立を実感するのは、医師に診断を下されたときです。なぜなら、それまでに感じてきた問題が解消されることを期待していたのですから。
また、ご自身の症状が治らないのであれば、少なくともよりよい人生が送れるような治療計画が立てられることを期待するでしょう。私は今も、父と暮らしていたときのことを思い出します。
私たちに診断を伝えた方たちは皆、とても親切で、愛情のこもった態度を示してくれましたが、その目には悲しみが満ちていました。
「あなたにできることは何もありません。」
「治ることはありません。」
「残念ですが…そういうことです」
父が私に診断について尋ねることはありませんでした。父が診断結果を知りたくなかったのかどうかはわかりません。単に尋ねるべき言葉がみつからなかったのかもしれません。
こうして孤独が始まったのです。
認知症の人たち は、少なくとも他者からの思いやりを感じる必要があります。
自らの人生がまだそこにあると意識するには、次にどのステップへ進めばよいのかを知る必要があり、そのステップを通らなければ、別の問題を抱えてしまい、日常生活に抑うつ感を感じながら生活することになります。
その問題とはたとえば次のようなものです。
- – 家族: 家族が現実を受け入れられず 、診断を否定しようとしたり、ご本人の前では別の人について話しているかのように振る舞います。病気のことを隠したがるのは、まず家族です。
- – 友人: 周囲の人が皆、距離を置くようになるため孤独感を感じます。ご本人が亡くなられたあと、誰もが距離を置いたことを申し訳なく思いますが、このような病気に対してどのように対応するべきかを知らないことに気づくでしょう。
- – コミュニティ: 認知症の人たちには、自身の感情やニーズを伝えるのに、通常とは違う手段があります。しかし、当事者以外はその手段を知りません。一般の人たちは、認知症の方とどのように話したらよいのか確信が持てないため、認知症の人たちに対してコミュニティの扉が閉ざされてしまいます。
人間にとって、存在しないことほど、コミュニティの一員でないことほど、家族の一員でないことほど、つらいことはありません…認知症の人たちはこのような感情すべてに向き合いつつ、最新の情報も、具体的なガイドラインも、標準化されたケアの方法もないことに気づきます。
ですから、孤立感、抑うつ、孤独を感じるようになるのは…、人として当然のことです。誰だって、何があろうと愛されたいし、コミュニティの一員でありたいのですから。