認知症という病気について (2)
認知症を疑ったときの検査
認知症を疑った場合、病院を受診すると診察やいくつかの検査を受けます。
1.問診
いつから、どのような症状があるか、他の病気や今飲んでいる薬などの聞き取りをします。本人だけでは詳しく説明できない場合も多いので、できるだけ本人の生活をよく知っている人にも説明してもらいましょう。
2.診察
手足の動きや筋肉のこわばりがないかなどのチェックを受けます。
3.認知機能検査
記憶力や日時の感覚、順序立てて物事を行う力などの確認を受けます。
75歳以上の場合、免許更新の際に受ける検査も認知機能検査です。
4.血液検査
血液中の甲状腺ホルモンやビタミン、カルシウムなどが認知機能に影響していることが
あるのでチェックします。
5.頭部画像検査
- 頭部CTやMRIといった脳の形態画像の検査
- 脳梗塞、脳萎縮、血腫、水頭症、腫瘍などがないか確認します。
- 頭部CTやMRIを撮影しただけで大丈夫と思う人もいますが、問診や認知機能検査を受けることが大切です。
- 頭部CTやMRIの他に脳血流シンチ(SPECT)などの核医学検査も必要に応じて受けることがあります。
認知症を調べる検査って、認知機能のテストだけでなく、採血や画像検査まで詳しくするんですね。
認知症を来す病気
認知症は1つの病気ではなく、認知症を来す病気は多数あります。その中でも主な病気を記載しておきます。認知症の症状の重さについては、認知症の経過の項を参照して下さい。
アルツハイマー型認知症
高齢期に最も多い認知症を来す病気です。認知症全体の6~7割を占めるともいわれています。
物忘れ(記憶障害)で始まることが多く、数年から10年以上かけて徐々に進行します。脳の神経の周囲や神経細胞の中にβ (ベータ)アミロイドやリン酸化タウという微少なタンパクの凝集が起こって神経細胞の働きを阻害したり、細胞死を来すことが原因とされています。典型的な場合は、脳の画像診断で、海馬(側頭葉内側部)などの萎縮が見られ、時間とともに萎縮の度合いが増します。65歳未満で発症した場合、若年性アルツハイマー型認知症と呼ばれます。20世紀初頭にこの病気について報告したドイツの精神科医アルツハイマーにちなんで病名がついています。
脳血管性認知症
脳の血管が詰まった場合は脳梗塞、脳塞栓を来し、脳の血管が破れた場合は脳出血を来しますが、これらの脳の病気で認知機能に影響が出た場合、脳血管性認知症と診断されます。脳梗塞、脳出血で麻痺や運動障害、言語障害を来していても、認知機能に影響がなければ脳血管性認知症とは異なります。高血圧、糖尿病、不整脈などがあって治療が不十分な場合に発症しやすく、悪化もしやすいので、それらの病気をきちんと管理することが大切です。
レビー小体型認知症
ありありと情景が見えているような幻視や歩行障害・手の震えなどを来すパーキンソン症状を伴う認知症です。窓際のカーテンが人に見えたり、カーペットの模様が虫に見えたりする錯視が生じている場合もあります。レム睡眠行動障害と呼ばれる怖い夢を見たり、大声を上げたり、夢にあらがって手が出てしまったりする症状を伴うこともあります。人によって、これらの症状のどれが強いかは異なっていて、幻覚や妄想だけが強い場合もあります。神経系の薬剤などに過敏なこともありますので、薬の調節は重要です。この病気も20世紀前半に活躍したドイツ生まれのレビー博士にちなんで名前がついています。
その他の認知症症状を来す疾患
上に挙げた3つの病気の他に、前頭葉を中心に脳の障害が起こる前頭側頭型認知症や、言葉の意味が理解しにくくなる意味性認知症などがあります。また、治療可能な認知症と呼ばれる一群の疾患があります。血液検査のところで記載したような甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、高カルシウム血症などでは、不足しているホルモンやビタミンなどを補ったりすることで治療が可能です。このような内科的な病気だけではなく、正常圧水頭症という脳内に脳脊髄液が過剰に留まる病気や、頭部打撲後などに2か月ほどして生じる慢性硬膜下血腫という病気では、脳外科的な手術を受けることで治療が可能です。