多職種、多業種連携で認知症の人を支える

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一般社団法人日本意思決定支援推進機構 通称:意思決定サポートセンター

成り立ち

一般社団法人日本意思決定支援推進機構(Decision Making Support Organization Japan: DMSOJ)は、2013年に発足したCOLTEMという産学連携のプロジェクトから生まれました。COLTEMはCollaboration Center of Law, Technology and Medicine for Autonomy of Older Adultsの略称で、科学技術振興機構(JST)のセンターオブイノベーションプログラム(COI)の助成を得て2013年から活動している産学連携拠点です。高齢者の地域生活を多職種、多業種連携で認知症になる前から、理解力や判断力が低下した時まで一貫して支え、社会の一員として包摂するための意思決定サポートシステムの構築を目指して研究開発を進めてきました。本社団はその成果を社会実装するために2018年に設立されました。認知症などで意思決定能力が低下した高齢者が、詐欺や消費者被害から守られるだけでなく、経済活動を通して社会参加を継続するために必要なことは何かを考え、そのための知識や技術の普及啓発、社会実装に取り組んでいます。

意思決定サポーシステム

認知症になっても自分の意思をもとに生活し、社会参加の権利が守られるためには、医療福祉の支援だけでは不十分で、民間企業のサービスや商品を自分のお金を使って契約したり購入したりする必要があります。財産管理や社会生活に必要な契約などがうまくできなくなった時に使える制度として成年後見制度があります。

成年後見制度は民法の中に位置づけられた、堅実かつ全国一律の統一性を持った制度です。一方で私たちが構築を目指す意思決定サポートシステムは、この成年後見制度も包み込むようにして、民間企業の工夫や地域ごとの特性を活かしながら弾力的に運用されるシステムを目指しています。

これまでの活動

現在の活動領域としては、医療、契約、財産管理、遺言といった分野があります。京都府からの委託を受けてこれら領域で働く人たちに意思決定支援研修を行っています。医療においては、医療行為を受けるにあたって本人の意思が尊重されるよう、医療従事者向けのガイドを作成したり、医療同意能力の評価法について研修や講演活動をしたりして普及啓発を図っています。契約、及び財産管理の領域では、主に金融機関の高齢顧客対応について書籍(実践!認知症にやさしい金融ガイド)を出版したり、

COLTEMと連携しながらワーキング・グループを立ち上げて議論し、その成果を報告書

金融機関高齢顧客対応ワーキング・グループ報告書

 

「金融機関高齢顧客対応ワーキング・グループ報告書」として刊行したりしている他、実際に金融機関に業務改善や行内の教育資材への助言などを行っています。また、金融機関の職員向けの資格試験(銀行ジェロントロジスト資格)を一般社団法人金融財政事情研究会と共同で企画し、2021年1月から資格認定を開始しています。

銀行ジェロントロジスト

 

すでに500名以上の方が受験しています。書籍については、一度台湾アルツハイマー病協会のシンポジウムで紹介する機会をいただき、その後台湾でも翻訳されて刊行されています。韓国のアルツハイマー病協会からも関心を持っていただいています。遺言については、弁護士、司法書士など遺言作成に関わる方たちが遺言者の遺言能力を的確に評価して、その人に合った遺言を作成できるようチェックリストを作成したり、評価を練習するためのビデオを作って研修を行ったりしています。2019年には新たな領域として集合住宅で暮らす認知症の人をどう支えるかをテーマに書籍(必携!認知症の人にやさしいマンションガイド)を出版しました。

今後の目標

今後の活動の目標は、すべての人が認知症の人の意思を汲み取り、意思決定を支援するための知識や技術を身に付け、症状が軽い時から進行した時まで一貫して認知症の人が必要な分だけ支援が受けられる社会を実現することです。そのために、急速に私たちの生活に導入されているデジタル技術にも着目しながら、すべての人に行き渡る公平で便利な仕組みを開発することを目指しています。デジタル技術と人が融合し、法律などの社会システムと統合されることでイノベーションが創出され、認知症の人だけでなく誰もが暮らしやすい地域社会を実現できると考えています。

【著者プロフィール】

成本 迅
京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学教授
一般社団法人日本意思決定支援推進機構代表理事

【団体プロフィール】

一般社団法人日本意思決定支援推進機構(通称:意思決定サポートセンター)
2018年4月に法律家と医療福祉関係者と民間企業からなる多様なメンバーで設立された、意思決定支援の知識や技術の普及啓発を目的とする団体。2020年9月からは、京都信用金庫と三井住友信託銀行が正会員として参画し、事務局を京都信用金庫本店に置いている。出版、研修、民間企業への助言の他、銀行ジェロントロジスト資格を創設している。
【公開連絡先】
〒600-8005 京都市下京区四条通柳馬場東入立売東町7番地
TEL.075-253-6038 FAX.075-253-6039
E-mail: info.dmsoj@gmail.com
ホームページ:https://www.dmsoj.com/

 

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