認知症フレンドリーの「なかま」を増やそう
認知症当事者とともにつくるウェブメディア「なかまぁる(Nakamaaru)」
なかまぁるは、「認知症当事者とともにつくる」をコンセプトに、朝日新聞社(The Asahi Shimbun Company)が2018年に立ち上げたウェブメディアです。メディア名は「なかま」と「ある」を組み合わせた造語です。私たち編集部は認知症当事者のみなさんと仲間同士でありたい、そして、このメディアを「仲間たちが出会う場所」として育てていきたいという思いをこめました。
若年性認知症当事者の丹野智文(たんの・ともふみ)さんを特別プロデューサーにお迎えし、動画連載を始めとする様々な企画に関わっていただいています。ほかにも、なかまぁるのインタビューやコラム、イベントなどには、多くの認知症当事者が登場します。彼、彼女らが自分らしさを大切に、様々な形で活躍するコンテンツを届けることで、認知症と診断されて大きな不安を抱えている人々に笑顔や前向きな気持ちをもたらすことができると考えています。加えて、「認知症=人生の終わり」であるかのような、社会にはびこる古い固定観念を変える力になっていくと信じています。
「認知症は自分には関係ない」という人にも見ていただきたいと、漫画やイラストを使ったコンテンツに力を入れています。たとえば、イラストレーターあさとひわさんの「認知症、はじめました。」。レビー小体型認知症と診断された父と家族の暮らしを、娘の視点から描くマンガです。高齢の両親と娘のちょっとした気持ちのすれ違いや、実家の片付けをめぐる珍騒動といったクスッと笑えるエピソードは、「どの家族にも起こり得るストーリー」として受け入れられ、多くのファンを集めています。
認知症カフェを盛り上げる
ここ数年、国内では認知症カフェが急速に増えています。なかまぁる看板連載の一つ「コッシーのカフェ散歩」は、認知症カフェ取材の第一人者であるコスガ聡一さんが、相棒のコッシー(コスガさんにそっくりな人形)を連れて各地の認知症カフェを訪ねる動画リポートです。動画には、そこに集う人たちの話し声、おいしい料理を載せた食器の音、場を盛り上げる音楽など、カフェの雰囲気がうかがえる情報がたっぷり入っています。住所や名前から検索できる「認知症カフェ検索」コーナーもありますので、ご活用ください。
2020年に世界に広がった新型コロナウイルスは認知症カフェにも影を落とし、開催中止が続出しました。一方、新たにオンライン開催に挑戦する認知症カフェも急増しました。この動きに着目して、コスガさんとなかまぁる編集部はFacebookに「認知症カフェ『これから』会議」というグループを立ち上げました。毎月1回を目標にオンラインイベントを開催し、
コロナ下での認知症カフェの工夫、オンライン化のノウハウ、感染対策の考え方などを話し合っています。ときには「認知症カフェの意義とは?」「認知症カフェは誰のためのもの?」といった根源的な議論も盛り上がり、ほぼ毎回、100~200人の方がライブ配信を視聴し、コメント機能を使ってリアルタイムのチャットに参加しています。
国内唯一の認知症に特化した短編映画コンテスト
2019年から、世界アルツハイマーデーの9月21日にあわせて「なかまぁる Short Film Contest」を開催しています。国内で唯一の、認知症に特化した短編映画のコンテストです。2回目を迎えた2020年は、プロフェッショナルの作品を審査対象とする「クリエイター部門」、ツイッターなどSNSに5分以内の動画を投稿して誰でも参加できる「フレンドリー部門」、400~2000字程度の認知症にまつわる短い文章を書いていただく「ショートストーリー部門」と3部門構成でおこない、各部門にそれぞれ38作品、21作品、1 329作品が集まりました。ショートフィルム2部門の授賞式は9月26日にオンライン開催。映画コメンテーターLiLiCoさんをメーンゲストに迎えて、監督らと回線をつないで賑やかなトークで盛り上がりました。ショートストーリー部門の受賞作は特別サポーターに就任した俳優の菊池桃子さんが朗読し、その様子を撮影した動画をなかまぁるで公開しました。
※「The Right Combination」は、こちらでご覧いただけます。
https://nakamaaru.asahi.com/article/12786158
認知症フレンドリー社会進展への貢献を目指して
「認知症の人はインターネットを使うのですか?」と聞かれることがあります。厚生労働省の推計によれば、国内の65歳以上の認知症の人は2025年に700万人に達するそうです。2019年の内閣府「高齢社会白書」をみると60~69歳のネット利用率(2017年時点)は73.9%、70~79歳は46.7%。2010年と比較すると他の年代よりネット利用の増加傾向が顕著でした。おそらく新型コロナウイルス流行の影響で、この傾向はさらに強まっていると考えられます。一方で、認知症には早期発見の大きな流れが起きており、認知症と付き合いながら「自分らしい暮らし」を続けるための情報を求める人が確実に増えています。
なかまぁるのキャッチフレーズは「あなたが認知症になっても、私が認知症になってもだいじょうぶ」。いつ、どこで、だれが認知症になっても安心して暮らすことができる「認知症フレンドリー社会」が、日本で、世界で、さらなる進化を遂げるように、なかまぁるも「なかま」を増やしながら、貢献していきたいと思います。
【団体プロフィール】
なかまぁる編集部はわずか6人の小所帯です(2021年時点)。ですが、認知症を自分事と捉える人はみんな「なかま」。一緒に、認知症の古いイメージを変える面白いことができないかと、日夜、頭をひねっています。新型コロナウイルスの感染拡大期に素早く在宅勤務に移行できたのは、特別プロデューサーを務める丹野智文さんに、早くからZoom(オンライン会議システム)の使い方を教わっていたおかげです。
【公開連絡先】
https://nakamaaru.asahi.com/