From Plan to Impact VIII が WHO 世界行動計画の延長を求める

国際アルツハイマー病協会(ADI)は、2025年5月に、各国の政策評価に関するレポート「From Plan to Impact VIII」を公表しました。この中で、WHO の世界行動計画(the Global Action Plan on the Public Health Response to Dementia 2017-2025)を2031年まで延長することを求めていました。この報告書の公表にともなって、ADI は、2025年5月21日にベルギーとオンラインでサイドイベント From Plan to Impact 2025 report launch: World Health Assembly side event を開催しました。
ADI CEO のパオラ・バルバリノから、2023年には WHO 加盟国のうち認知症政策を国家的に策定している国は39か国にとどまっていましたが、45か国に増えたことも報告されています。WHO 非加盟国も含めると53か国となります。
すでに認知症政策を策定しているインドネシアの大臣から、認知症の状況が紹介されました。現在策定中のヨルダンとスペインからは、作成しているプロセスが報告されました。
日本の取り組みは、厚生労働省の遠坂氏が報告しました。日本では、2023 年に認知症基本法が策定され、当事者参加がさらに促進されることになりました。アルツハイマー病の進行を遅らせる新薬の開発も紹介されました。同時に、認知症に優しいまちづくりとして、認知症カフェや認知症の人たちが働いたり社会参加していることを紹介しました。
続くオランダの取り組みでも、たとえ認知症の最終段階にあっても、尊厳が守られた環境で過ごすことができる取り組みが報告されました。アメリカでは、2011年の法制化で飛躍的に研究が進んだことが紹介されました。オーストリアからは、若年生認知症と診断されても治療されない家族の苦しみが報告されました。
パネリスト
- ヨルダン王国 ムナ・アル・フセイン王女殿下
- インドネシア共和国政府保健大臣 ブディ・グナディ・サディキン
- ヨルダン・ハシェミット王国保健大臣 フィラス・イブラヒム・アル・ハワリ
- 世界保健機関(WHO)脳健康部門責任者 タルン・ドゥア博士
- オランダ政府元保健・福祉・スポーツ大臣 コンニー・ヘルダー
- アメリカ合衆国アルツハイマー協会会長兼最高経営責任者 ジョアン・パイク
- スペイン政府高齢者・社会サービス研究所所属アルツハイマー病等認知症国家参考センター総局長 マリベル・カンポ
- 厚生労働省高齢者保健福祉局認知症対策課長 遠坂義正
- デメンツ・セルフヘルプ・オーストリア介護者兼理事会会長 フリーデリケ・デ=メイヤー
(敬称略)
この直後である2025年5月23日に、WHO は世界行動計画を2031年まで延長することを決定しました。これは、日本をはじめとして各国が働きかけたことによります。今回ご報告したサイドイベントも、大きな後押しとなりました。
【執筆者のご紹介】
馬場 美彦(小規模多機能じゃすみん扇、東京都健康長寿医療センター研究所 非常勤研究員)
【関連】
- ADI (2025) From Plan to Impact VIII, https://www.alzint.org/u/From-Plan-to-Impact-VIII.pdf
- ADI (2025) From Plan to Impact 2025 report launch: World Health Assembly side event, https://www.alzint.org/news-events/events/from-plan-to-impact-2025-report-launch-world-health-assembly-side-event/
- サイドイベント動画:
https://www.youtube.com/watch?v=9ANV_gqmOFg - ADI (2025) The 78th World Health Assembly agrees to extend the Global Action Plan on the Public Health Response to Dementia,
https://www.alzint.org/news-events/news/the-78th-world-health-assembly-agrees-to-extend-the-global-action-plan-on-the-public-health-response-to-dementia/ - 山下 織江 (2023)【HGPI政策コラム】(No.37)-認知症政策チームより-国際社会の認知症政策の現在地 2023, https://dementia-platform.jp/ja/article/1215/