〜知見、繋がりを大切に〜原田 修

両親の介護で「敗北感」の中、若年性認知症の診断を受ける
2021年6月頃から、介護職で得た知見を持って両親の介護に努めましたが、半年持たず自宅介助が困難になりました。両親の急速な認知症進行への受け止めを十分に出来ず、介護職で得た知見を全く活かせなかった、何も出来なかった敗北感のみが強く残りました。
介護と並行し、自身の治療経緯で主治医から若年性認知症との診断を受けました。両親の介護というかたちで認知症発症時の状況を体験し、自身もいずれああなると悟り、「介護での、あのような思いを他の親族に背負わせたくない」「誰も自分の思いを聞く者はいない。話したところでどうなるものでもない」と、約一年間逡巡していました。
若年性認知症コーディネーターを紹介されて
経済的困窮に備え再就職を試みるも叶わずいたところ、自治体から当事者と家族による集まりがあると聞かされ、コーディネーターの松本由美子さんを紹介されました。当事者と家族の集まり=「リンカフェ」に通うようになり、他の方々との交流を通し、後ろ向きな思考を立て直し、絶望的と思われた社会参画の復帰の可能性を模索し始めるキッカケを得ました。
当事者本人世話人として、講演やオレンジ大使の活動も
現在、就労継続支援事業所に通いつつ、当事者本人世話人としてリンカフェに通う傍ら、他の集まりにも参加し、大学で自身の体験や思いを語る講演の機会をいただき、それ以来、当事者としての思いを語り広める講演をうけています。2024 年9月には埼玉県知事より埼玉県オレンジ大使の任を受けました。
おぼつかないながらも「試行」は楽しみ~知見、繋がりを大切に
残された時間、病気の進行を如何にして遅らせるか、おぼつかないながらも試行を続けています。
「おぼつかないこと」にも困惑していますが、「試行すること」が楽しみでもあるのです。認知症は数ある病気の一つでしかない、やりたかったことを諦める必要はない、と思います。様々な仲間の皆様と出会い、異なる知見や新たな視点を得られたのは幸運でした。
そして、皆さんが経験してきた知見、仲間との繋がりを活かし、大切にして欲しいと願っています。
編集:中野 智之