ランセット：認知症の新たなリスク要因を2つ特定し、45%の症例は遅らせたり、軽減したりできる可能性があると提言しています。
編集委員会 / Editorial Office
2024年8月1日
この記事は、国際アルツハイマー病協会（ADI）の記事を日本語に翻訳したものです。
ランセット誌が委託したこの研究では、視力低下とLDLコレステロール値の高さを認知症のリスク要因として含めるために、2020年の調査結果が修正されました。
医学誌『The Lancet』が委託した新たな研究により、認知症の45%は遅らせたり軽減したりできる可能性があることが明らかになりました。これは2020年の調査結果から5%増加したことを意味します。また、今回の更新された研究では、視力の低下とLDLコレステロール値の上昇という2つの新たなリスク要因が特定され、リスク要因の総数は14となりました。
また、この研究では、中年期(18歳~65歳)にほとんどのリスク要因に対処することが、その後の人生における認知症の発症を遅らせたり予防したりする上で最も大きな影響を与えることが示されました。幼少期(0~18歳)では、教育歴の短さが最も大きな影響を与えることが判明しました。一方、社会的孤立、大気汚染、視力低下は、晩年期(65歳以上)のリスクに大きな影響を与えることが分かりました。 人口統計学的観点から、研究者は、低・中所得国や社会経済的地位の低い人々が、特定された14のリスク要因によるリスクが最も高く、それらに対処するための介入から最も恩恵を受ける可能性が高いと指摘しました。
危険因子が取り除かれた場合の認知症の症例の割合減少
幼少期(0~18歳)
5% 少ない教育(Less education)
中年期(18歳~65歳)
7% 難聴(Hearing loss)
7% LDLコレステロール値の高さ(Heigh LDL cholesterol)
3% うつ病(Depression)
3% 外傷性脳損傷(Traumatic brain injuryy)
2% 運動不足(Physical inactivity)
2% 糖尿病(Diabetes)
2% 喫煙(Smoking)
2% 高血圧(Hypertension)
1% 肥満(Obesity)
1% 過剰なアルコール摂取(Excessive alcohol consumption)
晩年期(65歳以上)
5% 社会的な孤立(Social isolation)
3% 空気汚染(Air pollution)
2% 視覚の喪失(Visual loss)
→45%の潜在的な修正可能性
N この危険因子が取り除かれた場合の認知症の症例の割合減少
図は、2024年7月31日付の『ランセット』誌常任委員会による「認知症予防、介入、ケア:2024年報告書」https://doi.org/10.1016/S0140-6736(24)01296-0を基に作成。
この調査について、ADIの研究・出版部門ディレクターであるウェンディ・ワイドナー氏は次のように述べています。
「この研究は、人生のさまざまな段階で的を絞った介入を行う生涯にわたるリスク軽減アプローチの重要性を強調しています。特にリソースが限られた環境において、早期にこれらのリスク要因を特定し対処することで、認知症が世界に与える影響を軽減する大きな機会が生まれます。認知症の治療法はまだ見つかっていませんが、認知症リスクへの積極的な取り組みは、個人および社会レベルで大きな違いをもたらす可能性があり、政策立案者は重要な役割を担っています。」
2023年、ADIは「認知症リスクの低減:早すぎるということはなく、遅すぎるということもない」と題した「世界アルツハイマーレポート」を発表しました。このレポートでは、世界中の認知症リスク低減の実践的かつ具体的な事例を紹介しています。
また、レポート内のケーススタディは、自身のリスクを低減しようとする個人や、人口全体のリスクに対処しようとする政策立案者にとって貴重な洞察を提供しており、世界中で成功した介入の明確な例を紹介しています。
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公益社団法人認知症の人と家族の会は1980年に結成された、認知症の人と家族・介護者が結成した民間の団体です。
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