肥沼 真一〜人生はまだまだ続いていく〜
きっかけは子どもたちからのクレーム
講師として、試験に合格することは勿論ですが、ワンランク上の問題が解けた時の子供達の輝くような笑顔は私の力の源でした。保護者との関係も良好で、十分充実した人生を送っていました。とても気に入った仕事でした。
子ども達から「先生、授業のスピードが遅い!」とクレーム。これは普通自分では気付かないものです。只事ではないと感じ、直ぐに病院に向かいCTを撮った所、一部が真白。既に脳が11%も収縮してしまっていました。診断は若年性アルツハイマー型認知症でした。
言葉も出て来ない。文字も書けない。授業にならない。
こうして唐突に私の講師としての人生は終わりを迎えたのです。61歳でした。
仕事を辞め、病院巡りの日々
そんな中、地域ケアプラザの認知症カフェに参加する機会がありました。そこで「認知症の人と家族の会」の方たちと出会い、「家族の会」を知りました。
そして数あるつどいの一つ「本人のつどい やまゆりの会」へお試しで参加することになりました。はじめは音楽の集い。お試しのつもりでしたが、即日に入会を決めました。
2回目の集まりは何と! 一泊温泉旅行でした。本当に楽しく、忘れられない思い出になりました。
プロジェクト「まちかどピクチャーズ」との出会い
ある日、会の世話人の方から「NPO法人のプロジェクトに参加してみませんか?」と電話をいただきました。これが私とプロジェクト「まちかどピクチャーズ」との出会いです。認知症の当人がレポーターとなってサポーターがカメラマン。二人一組で認知症カフェの取材をして、それをYouTubeで流す。認知症カフェの存在を知ってもらい、雰囲気を知ってもらう。「やりたい!」と思いました。話を聞いて即断しました。そうして今、私は楽しんでレポーターをやっています。
人生はまだまだ続いていく
認知症になって出来なくなったことが沢山あります。でも全部出来なくなった訳ではありません。
そして代わりに出来ることはまだまだ沢山あるのです。
「力むな」・「焦るな」・「諦めるな」
ゆっくりと進めば良いのです。人生はまだまだ続いていくのですから。
編集:中野智之