〜今度は支える側へ〜新里 勝則

「これは間違いだ!」~診断を受けたとき~
私は現在66歳、2015年12月、56歳の時、若年性前頭側頭型認知症と診断されました。
その診断を受けた時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。診断を聞いた瞬間、「これは間違いだ」と思いました。自分の記憶力はまだ大丈夫だし、人とも普通に話せていたからです。しかし、家に帰って妻と長男が泣いているのを見たとき、家族に迷惑をかけるくらいなら死んだ方がいいのかな、両親が泣くのを初めてみて、親不孝だなと思いました。
大城勝史さんと出会って
診断後は2 年ほど家に閉じこもりがちでしたが、大城勝史さんが認知症を公表したニュースを見て勇気をもらいました。「認知症の人と家族の会」に参加し、同じ境遇の人たちと話すことで「一人じゃない」と感じられるようになり、大城さんとの出会いは大きな支えとなりました。
子どもたちから背中を押されて、公表、講演活動に
認知症であることを公表するまでには、偏見や子どもたちへの影響など、さまざまな葛藤がありましたが「お父さんの姿をみて後に続く人が出来たらいい」と背中を押され、2018 年に公表しました。
認知症と診断された当初、自分の意見も聞かず勝手に決められたデイサービスは、自分に合わずとても苦痛だった事など、自分の経験を通して「福祉に関わる方の意識が変われば関わり方も変わり、福祉の世界も変わっていくのでは」と考え、講演会などで自分の思いを伝えるようになりました。
2023年には沖縄県認知症希望大使に委嘱され、認知症の啓発活動に携わっています。
診断から10 年、今度は支える側へ
運転免許証を返納したことで、一人での外出は難しくなりましたが、家族や周囲に支えられ日々を過ごせています。趣味の音楽を聴いたり、ギターを弾いたり、またドライブや孫との時間を大切に、一日一日を大事にしています。また、月1回の本人交流会(同志会)は楽しく会話が弾み、あっという間に3~4時間が過ぎていきます。
認知症と診断されて10 年が経ちました。これまで多くの方々に支えていただき、今度は支える側へと妻と共に「本人と家族のカフェ」を月2回開催することにしました。認知症の方とその家族が気軽に集い、悩みを話し合い、共に歩める仲間の一助になればと思っています。
編集:中野 智之